第3回子宮頸がん予防活動奨励賞

「検診」と「ワクチン」のさらなる普及をめざす『子宮頸がん予防活動奨励賞』。第3回は8件の応募の中から、子宮頸がん予防(検診とワクチン)の目覚ましい成果がある、活動が実践的で啓発のモデルになりうる、多角的で他領域との連携がおこなわれている、一般の人々との良好なコミュニケーション・アプローチをとっている、正しい医学的知識に基づいた活動である、などを選考基準とし、以下の8団体の表彰を決定しました。
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        各団体の詳細な活動内容をご覧いただけます。ご参考ください。

団体名(五十音順) 主な活動と評価ポイント
滋賀県産科婦人科医会 

自治体の範囲を超えた施設での検診を可能にし、受診率アップ    

滋賀県の子宮頸がん検診受診率は全国ワースト4。滋賀県内のどの自治体でも受診でき、且つ平等な精度で診断・管理が可能になるよう、平成20年より活動を行った。

13回の市民公開講座、思春期生徒に年5回講演、公費負担で来院した子供へのワクチン接種と付き添いの母親の子宮頸がん検診の同時施行の推進、小児科医との連携強化、保健関係団体への啓発などの結果、平成23年までのワクチン接種率は平均74.4%で各学年とも全国平均より高かった。

自治体の範囲を越えた施設での検診受診を可能にすることで、受診者数が増加。検診方法の変更、ベセスダ分類への報告様式変更などにも取り組む。

検診受診率が高いトップ3の自治体を表彰したところ、翌年度も高い受診率を維持。平均値以下の8自治体に対しては、名前を公表し改善を促した。
性と健康を考える女性専門家の会

■健康の専門職が、医療職者と一般の方に正確な情報を届ける活動

女性の性と健康について、まず女性医療者が自ら動こうと、1997年に設立。健康なセクシュアリティのために、設立時より性感染にも着目し、予防啓発活動を行ってきた。子宮頸がん予防啓発活動は2008年より開始。以来、シンポジウムの開催、ニュースレターの発行などを実施してきた。その子宮頸がん予防に関する5年にわたる活動の成果として、2013年11月の講演会の開催があげられる。現在の日本の子宮頸がん予防に関する問題の1つとして、医療者をはじめ、自治体、学校関係者、保護者、そして当事者である若い女性が、様々な情報に翻弄され、何が正確な情報であるのかが分からなくなっている。本講演会は、その問題の解決の糸口であった。

少しずつ情報が届き、医療職者の間で抱いていた疑問が解け始めている。今までと同様、正確な情報を、医療職者と一般の方に届ける活動を続けていきたい。
長野県細胞検査士会

■子宮の日に合わせたイベント「愛は子宮を救うin長野」で若年啓発

「平成22年から啓発活動を開始。子宮の日に合わせて平成23年よりトーク&ダンス&音楽イベント「愛は子宮を救うin長野」を開催。看護学校、サッカー試合会場、合コン受付会場など幅広くチラシを配布し若者にアピール。平成25年の第3回イベントには約1000名が参加した。

また、長野県主催「みんなで知ろう がんのこと!」に協力団体として参加し、啓発パネル展示と顕微鏡モニターによるがん細胞の提示、啓発資料の配布を行った。平成23年、24年の「リレーフォーライフ in 信州」では、リレーチームを作り24時間歩いたり、子宮頸がんの講演やディスカッション、産婦人科医・小児科医による相談コーナーを設けて啓発。成人式での啓発も行った。

啓発活動を通して、普段接することのできない患者さんとかかわることができ、自分たちの仕事の大切さを見直し、社会の中での役割を再確認することができた。

奈良県産婦人科医会

■ワクチン接種率の向上に有効な広報活動の在り方に関する自治体調査

奈良県産婦人科医会では、ワクチン接種率の向上に有効な広報活動を明らかにするため、奈良県内の39自治体(12市、15町、12村)を対象にアンケート調査を実施した。

中学1年生のワクチン接種率の向上に、接種費用の無料化および自治体からの個別通知および学校通知が有効であることが示された。また、未接種者の接種率向上には個別通知が有効であることも明らかになった。

さらに、30・40代女性の子宮頸がん検診の受診率が高い自治体では、中学1年生のワクチン接種率も高いという関係が示された。子宮頸がん予防に対する母親の意識の高さが娘のワクチン接種に影響していると考えられる。

女性が生命を守るための行動を積極的に選択できるよう、自治体の広報活動の果たす役割は大きい。ワクチン接種に対する教育、啓発および行政との連携をこれからも継続し、ワクチン接種率の向上に有効な広報活動の在り方を指導していきたい。

一般社団法人シンクパール 

pearl of wisdomプロジェクト 

■シンクパールをシンボルに活動、世界の啓発手法を日本へ導入

真珠(Pearl)を育てるアコヤ貝を子宮になぞらえ、ThinkPearl(シンクパール)をシンボルマークや合い言葉として、婦人科系疾患の予防啓発活動を行っている。

2012年9月から、世界36カ国で行われている子宮頸がん予防啓発キャンペーン「Pearl of Wisdom」の日本版プロジェクトをスタート。高い成果をあげる世界的な活動に学び、国内での啓発活動に取り組んでいる。

さらに、いのちと未来をはぐくむ子宮を中心とし、婦人科系の疾患や、健康に関する正しい知識の普及と病気の予防を目的とした活動、教育を支援するための基金を、プロジェクト内に立ち上げる。広報活動を行うアンバサダーの任命やアワードの実施をはじめ、組織間でのコラボレーションやイベントキャラバンを通じて多面的なキャンペーンプログラムを展開予定。

松田陽子&Stand for mothers

■ママ支援コミュニティを通じた、若ママによるユニークな啓発活動

全国各地において、松田陽子さんが自らの子宮頸がんの経験を語る中で予防の啓発活動を行う。2012年より、ママによるママの支援コミュニティ「Stand for mothers」理事に就任。健康促進⽀援として、日本対がん協会と連携し子宮頸がん予防啓発プロジェクトを推進している。

全国6大都市にて予防啓発イベント開催、900人以上の若ママが参加し、自分のブログで情報発信、検診受診を啓発。その結果、40人を超えるママに前がん病変段階である「異形成」の状態が⾒つかった。

ママのためにママが作成した子宮頸がん予防啓発の⼩冊子を制作し、配布。ママが自発的に⾏動し、全国の保育園や幼稚園、児童館、病院、美容室などに設置している。

大切な人を想う日「七夕」に、女子大生と若ママがコラボし「七夕ガールズアクション」を展開。

今後、「子連れで検診には⾏きにくい」という若ママたちの悩みを解消する、ママ発のアイデア「ママ友検診」を、協力いただける医療機関とともに進めていく。

山梨まんまくらぶ

       

出前講座で女性のがんを啓発、自分の健康を自ら守る大切さを伝える

乳がん経験者が代表の乳がん啓発団体だが、若い世代から関心を持ってほしい子宮頸がんに関しても、情報提供と啓発活動を行っている。

「私の健康を守ってくれるのはだれ?」をテーマに、乳がんと子宮頸がんを合わせた女性の健康啓発に関する出前講座を企画し、要望のあった企業・団体に出向いて行っての情報提供を行っている。

講座参加者の年代に幅があり、健康に対する意識も違うが、すべての年代の女性に意識してほしい「自分の健康は自分で守る」という考えを浸透させる。特に、「自分で守ろう自分のからだ」「自分のからだにもっと関心を持とう」「 検診は大切」という項目は、アンケートの自由記述によるキーワードとして意識度が高く、自分の健康に関する意識とがん検診に対する意識が変わったと思われる。

米山大志

■27歳で逝った姉の闘病生活を家族の視点で伝え、社会に問題提起

結婚後すぐに子宮頸がんが見つかった姉・米山朋恵さんが、 結婚1年余り、27歳で死去。

姉の人生を通して、子宮頸がんはまったく他人事ではなく、いつ自分が発症しても不思議ではないことを医学的な見地を交えて説明し、そして特に若い女性に対して子宮頸がんの予防の大切さを伝えるため、闘病生活を綴った『Dear姉ちゃん』を出版。患者のみならず家族の視点から子宮頸がん予防を啓発している。

日本における予防対策はまだまだ不十分。検診受診率の向上、また、子宮頸がん予防ワクチンの理解促進や検診時のHPV検査併用の拡大など、社会への問題提起としたいと考えている。

著書に続き、啓発VTRも制作。今後、『Dear姉ちゃん』の電子書籍化やフリーペーパーへの連載、メディア、企業、団体からの取材や、勉強会での講演などを予定している。