緊急ワークショップ「“女性のがん検診無料クーポン”の有効利用」開催

日時:2009年9月9日(水)18時30分~20時45分
会場:東京ステーションコンファレンス
主催:子宮頸がん征圧をめざす専門家会議
後援: (財)日本対がん協会、(社)ティール&ホワイトリボンプロジェクト

共同記者会見の風景
国の平成21年度補正予算による緊急経済危機対策の一環として「女性特有のがん検診に対する支援事業」が始められ「検診無料クーポン」が配布されている。それを有効利用し受診率向上を図ることが緊急の課題となっている。
当会では「検診無料クーポン」の配布状況について、8月中~下旬に全国1798自治体対象に緊急アンケートを実施し、約半数の回答をいただいた。その実態を広く知らせ、受診率アップにつなげるため、アンケート調査結果ならびに日本産婦人科医会の対策、国内外の取り組みを紹介する緊急ワークショップを開催。メディア、アンケート回答自治体のがん検診担当者など100名以上が出席し、後半のワークショップではそれぞれの立場から積極的かつ建設的な提言が寄せられた。閉会後もロビーにおいて講演者を囲む大勢の輪ができ、活発な質問・懇談が続いた。
■開会挨拶 
子宮頸がん征圧をめざす専門家会議議長・近畿大学前学長 野田起一郎 

■1.女性の幸せな一生のために‥がん征圧のためにすべきこと                 
 衆議院議員 民主党元政調会長 仙谷由人 

■2.子宮頸がん予防のパブリックヘルス教育―英国を例に                  
 日本赤十字北海道看護大学准教授 シャロン・ハンリー

■3.「自治体アンケート調査結果」と産婦人科医会の子宮頸がん検診受診率向上策     
 日本産婦人科医会常務理事・子宮頸がん征圧をめざす専門家会議実行委員
 自治医科大学産婦人科学講座教授 鈴木光明

■4.子宮頸がん征圧をめざす専門家会議活動報告と私たちができる取り組み      
 子宮頸がん征圧をめざす専門家会議実行委員長・日本産婦人科医会がん対策委員会子宮がん小委員長
 自治医科大学附属さいたま医療センター産婦人科教授 今野 良

■5.島根県における新しい子宮頸がん検診の取組みと成果                   
 日本産婦人科医会がん対策委員会委員長・子宮頸がん征圧をめざす専門家会議委員 
 島根県立中央病院母性小児診療部長 岩成 治

■6.ワークショップ 「検診無料クーポン」を上手に使って受診率向上            
 司会:今野 良

※出席者からのご意見・ご提言は要約に文字で掲載

■閉会挨拶
※スケジュールの都合により、プログラム3の後に挨拶
子宮頸がん征圧をめざす専門家会議実行委員・日本医師会常任理事 今村定臣   

緊急ワークショップ「“女性のがん検診無料クーポン”の有効利用」総括 

今野 良 (子宮頸がん征圧をめざす専門家会議実行委員長)
今回の“女性のがん検診無料クーポン”のワークショップで浮き彫りにできた成果を以下にまとめる。
これまでのがん検診は、個人負担あり、個人への直接通知なし、受診勧奨なし、といった体制での実施だった。その背景には、検診予算が特定財源ではなく国からの一般財源によるものであるために、自治体は検診事業への予算削減を余儀なくされているという実情(受診者が増えると財政を圧迫する)があった。しかし、今回の“女性のがん検診無料クーポン”は、無料(個人負担なし)、個人への直接通知、の二つを国の予算と指示のもとに実施する点に大きな前進があり、いわばホームラン(野田議長談)である。その上に、自治体からのきめ細かい受診勧奨や未受診者への再度の受診勧奨が実施されればこれまで受診経験がなかった人々の新規受診のきっかけになる。
地方自治体の広報と検診従事者の積極的できめ細かい受診勧奨を支援する草の根の活動が重要、さらには、それらを応援し、検診の意義、無料クーポンの存在を身近に知らせるためのマスメディアの動きが大きな力になる。検診を受けることがポジティブで健康な個人、家庭、社会を作るために重要なことであるという認識を広く周知し、「みんなが検診を受けている」、「検診を受けていることがクールでかっこいい」という意識と行動変容を引き起こしたい。そして、国全体で共通の検診フォーマット、事業推進の統一化を含めた継続事業とすることが重要である。

ワークショップ「検診無料クーポン」を上手に使って受診率向上【要約】

司会:今野 良 (子宮頸がん征圧をめざす専門家会議実行委員長)
今野今日はメディアや自治体のがん検診担当者が多数参加されている。検診無料クーポンを上手に使い受診率を向上するため、それぞれの立場から方策を探り、提言・討議をお願いしたい。
メディア6月のがん対策推進協議会では、受診者の利便性の向上、市区町村間の有効活用、という意見が上がっていた。今回産婦人科医会が提案する「平日検診時間の延長」策は有効と思う。
今野市区町村間の有効活用という点については、例えばA自治体に産婦人科医が少ない場合、B自治体と提携して受診者の利便性を図る、ということは自治体間で可能なものか。
自治体職員市区町村を越えての活用は難しい。医師会の関係、新規業者の参入への抵抗等がある。他の市区町村とのやりとりの事務手続き上の問題もある。(厚生労働省からは具体的な調整に関しての指導はない、各自治体が取り組むか否かは自主性に頼っている)
自治体職員私の自治体では、市民からの要望があった病院と折衝し、新たに検診施設としての契約を結んだ。また、首長が女性のがん検診に熱心で、金曜日を検診レディースデーにしたら受診率5割アップにつながった。市民からの要望が自治体を動かす可能性がある。
自治体職員各自治体で検診問診票やデータの管理方法が異なる。厚生労働省がすでに行っている特定(いわゆるメタボ)健診のように全国統一のフォーマットがあれば、市区町村を越えた活用が可能になるのではないか。
今野自治体、メディアなどから国に働きかけが必要。来年度は市区町村を越えた活用を実行可能にすべく、各方面に働きかけたい。
自治体職員検診無料クーポン券つきがん検診手帳の表紙は全国統一なので、メディアで写真入りで紹介してほしい。メディアを見た人に「このクーポン、見たことがある!」と思ってもらうと受診促進につながるのではないか。また、クーポンに使うイラストが若い人向きで、子宮頸がん検診対象者にはいいが、乳がん検診対象者にはどうか?厚生労働省が作成したがん検診受診率50%達成に向けたイメージキャラクターは「ゆるキャラ」なので、これをいろいろなところで周知した方が検診が普及するのではないか。
今野メディアの支援が有効。ぜひお願いしたい。
メディア今回の調査で個人向けに受診勧奨する取り組みをしていた自治体は、首長が熱心なのか?医師側が熱心なのか?
今野どこか一つではなく、各サイドの連携が良いとうまく運ぶのではないかと思う。
啓発団体啓発にはメディアの力が大きいので期待している。検診の勧奨はフェイス・トゥ・フェイスで、心のこもった「伝え手」がいることが重要。自治体の保健師が戸別訪問し勧奨するのは良いやり方。健康推進員などその町に住む「おばちゃん」を活用するやり方もある。学校の先生への研修に組み込むのもいい。「伝え手」となるキーパーソンに働きかけると、一人からたくさんの人に広がると思う。また、自治体の保健担当だけで取り組むのではなく、教育担当者とも連携し、熱い思いを持った人を増やしていくことが大切。
今野女性誌や新聞で日を決めて一斉に告知するとか、インパクトのある取り上げをぜひトライしてほしい。
岩成検診の受診率が「低い」と言うより、「みんな受けている」と言った方が動くので、行政やメディアにはそのような言い方・報道をお願いしたい。
自治体職員高齢者は病院になじみがあるので、検診にも行きやすい。若い人は健康なので病院になじみがない。病院に行きやすくすると受診率アップにつながるのではないか。
今野検診を受けるのがかっこいいという雰囲気、一つのムーブメントを作ることが必要だ。本日は、受診率向上のための大変有意義な提言をいただき、感謝している。今後も子宮頸がん征圧のために皆様と協力し一丸となって取り組んでいきたい。
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